カバー写真 (装幀=工藤強勝)

内容一覧

序 映像生態学のほうへ 宇野邦一

1 映像の知覚を再考する
 触感的知覚の考古学 ローラ゠U・マークス(程 謙 訳) 
 潜在的なものを予見する ブライアン・マスミ(三宅隆司 訳) 
 知覚しがたいもの、イメージ空間 宇野邦一 

2 批判と創造――アーチストの観点
 ドゥルーズとストローブ夫妻のあいだで――生の移動としての出逢い ジョルジョ・パッセローネ(堀 千晶 訳) 
 ヒロシマ、身体、イメージ 諏訪敦彦(講演) 
 欲望のアナログな流れ 河合政之(対話vs.宇野邦一) 
 映像は身体からやってきた 田中 泯(対話vs.宇野邦一、コメント:石原淋)

3 ドゥルーズ哲学からの生成変化
 ディアグラムと身体――図ディアグラマティク表論的思考について 江川隆男
 エイハブの恥辱か、フェダラーの勇気か。――ドゥルーズとフーコー 廣瀬 純 
 無知の砂漠――皮膚・補綴・ダンス 堀 千晶 
 また消えるために――思考のイメージについて 松本潤一郎 
 ニヒリズムと生政治 ペテル゠パル・ペルバルト(松本潤一郎 訳) 

4 ディアスポラあるいは知覚のノマディズム
 彷徨う線――フェルナン・ドゥリニーについて ペテル゠パル・ペルバルト(松本潤一郎 訳) 
 日本と西洋のあいだでの芸術的ディアスポラ――ジルベール・シモンドン、ウィリアム・バトラー・イェイツ、スティーヴ ・パクストンの予期せざるコネクション クリスチーネ・グライナー(堀千晶訳)
 世界の音に出会う 荒木優光(対話vs.松田正隆) 
 演劇の皮膚 松田正隆

 あとがき


編著者紹介
宇野邦一(うの くにいち)
1948 年松江市生まれ。パリ第8 大学哲学博士。立教大学名誉教授。現代フランス文学思想専攻。
著書:『アルトー 思考と身体』(白水社)、『反歴史論』(せりか書房、講談社学術文庫)、『破局と渦の考察』(岩波書店)、『〈単なる生〉の哲学』(平凡社)、『アメリカ、ヘテロとピア』(以文社)、『ドゥルーズ 群れと結晶』(河出書房新社)、『映像身体論』『吉本隆明 煉獄の作法』(みすず書房)、『マイノリティは創造する』(共編著、せりか書房)、『映像と身体』(共著、せりか書房)など。
訳書:ドゥルーズ/ガタリ『アンチ・オイディプス』、ドゥルーズ『フーコー』、『襞』(河出書房新社)、ベケット『伴侶』、『見ちがい言いちがい』(書肆山田)、ジャン・ジュネ『判決』(みすず書房)など。

執筆者紹介
ローラ= U・マークス(Laura U Marks)
Dena Wosk University / Simon Fraser University,Visual Culture and PerformanceStudies 教授 。Touch (University of MinessotaPress, 2002), The skin of the film (DukeUniversity Press, 2000), Enfoldment andInfinity : An Islamic Genealogy of NewMedia Art (MIT Press, 2010) などの著書があり、映像表現を触覚的次元という面から探求しながら、近年はその成果をイスラム哲学と結びつけている。

ブライアン・マスミ(Brian Massumi)
1956 年生まれ。カナダ、モントリオール大学教授、社会理論家、作家、哲学者。研究分野は、芸術、建築、政治理論、文化、哲学など多岐にまたがる。ジル· ドゥルーズとフェリックス· ガタリ共著『千のプラトー』の英訳者であり、主な著作にA User's Guide toCapitalism and Schizophrenia: Deviationsfrom Deleuze and Guattari (MIT Press,1992) や、Semblance and Event: ActivistPhilosophy and the Occurrent Arts (MITPress, 2011) がある。

ジョルジョ・パッセローネ(Giorgio Passerone)
フランス、リール第3大学教授。哲学、イタリア文学、映画などを研究する。『千のプラトー』をイタリア語に翻訳した。『ダンテ、生の地図学』(2001)、『パゾリーニの移動』(RenéSchérer との共著、 2006)、『トカゲ――ストローブ夫妻の映画』(2013) などがあるほか、映画監督ジャン=マリー・ストローブの作品制作にも参加し、俳優として出演している。

諏訪敦彦(すわ のぶひろ)
1960 年生まれ。映画監督。東京藝術大学大学院映像研究科教授。主な監督作品「2/デュオ」(97)「M/OTHER」(99)「H Story」(01)「不完全なふたり」(05)「ユキとニナ」(09)など。共著書「こども映画教室のすすめ」(春秋社)。

河合政之(かわい まさゆき)
1972 年生まれ。東京造形大学・東北芸術工科大学非常勤講師、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻(表象文化論)博士後期課程在籍。世界30 ヶ国以上で上映、受賞多数。文化庁・各種財団の派遣・招聘によりNY、パリ、イスラエルなどに滞在。六本木Think Zone(森美術館主催)、NY クイーンズ美術館、Chi-Wen Gallery(台湾)、 MORIYU GALLERY などで個展。オーバーハウゼン国際短編映画祭審査員、ポンピドゥセンター主催の映像祭プログラムディレクターなど歴任。主な作品に『スペクタクルの社会における神学的状況について』(2001)、『Video Feedback』シリーズ(2009 〜)など。

田中 泯(たなか みん)
1945 年生まれ。1966 年クラッシックバレエ、モダンダンスを学んだ後、1974 年から独自のダンス、身体表現を追求するようになる。本格的海外デビュー[ パリ秋芸術祭『日本の「間」展覧会』( ルーブル装飾美術館)1978 年]をきっかけにし、ゆるやかで微細な動きで身体の潜在性を掘り起こすパフォーマンスは、ダンスをはるかに越えて、新しい芸術表現として衝撃をもたらした。一方、1985年から今日に至るまで、山村へ移り住み農業を礎とした日常生活をおくることで身体性を真剣に追求している。映画『たそがれ清兵衛』(山田洋次監督)初出演により、映像への出演も多く独自の演技力によって異彩を放っている。

石原淋(いしはら りん)
1971 年生まれ。舞踊家。1994 年から田中の拠点である山村で共同生活を開始以後、田中泯作品には数多く出演する。特に桃花村舞踊団(2000 年2 月〜2006 年1 月)ではダンサーとして欠かせない存在とし頭角を現し、2006 年からは、田中の振付によるソロシリーズ「昭和の体重」「否連続」「野をさがす」「八月十五日のエトランゼ」などを継続中。田中泯のあらゆる活動のマネージメントも担当している。

江川隆男(えがわ たかお)
1958 年生まれ。立教大学現代心理学部教授。西洋近現代哲学、反道徳主義倫理学。主な著作に『存在と差異――ドゥルーズの超越論的経験論』(知泉書館)、『死の哲学』、『超人の倫理――〈哲学すること〉入門』、『アンチ・モラリア――〈器官なき身体〉の哲学』(以上、河出書房新社)、などがある。主な訳書にエミール・ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』(月曜社)、ジル・ドゥルーズ『ニーチェと哲学』(河出文庫)などがある。

廣瀬 純(ひろせ じゅん)
1971 年生まれ。龍谷大学経営学部教授。映画論、思想。主な著作に『暴力階級とは何か』( 航思社)、『アントニオ・ネグリ』( 青土社)、『絶望論』( 月曜社)、『闘争の最小回路』( 人文書院)、『蜂起とともに愛がはじまる』『美味しい料理の哲学』( ともに河出書房新社)など。

堀 千晶(ほり ちあき)
1981 年生まれ。早稲田大学文学学術院助教。仏文学。共著に『ドゥルーズ キーワード89』(せりか書房、増補新版、2015 年)、共編著に『ドゥルーズ 千の文学』(せりか書房、2011)、訳書にセルジュ・マルジェル『欺瞞について――ジャン= ジャック・ルソー、文学の嘘と政治の虚構』(水声社、2013)ほか。

松本潤一郎(まつもと じゅんいちろう)
1974 年生。立教大学教育講師。フランス文学・思想史。主要論文「永遠回帰における回帰せざるもの――クロソウスキーと沈黙の場所」「クロソウスキーにおけるイメージと言葉の結合」「ピエール・クロソウスキーにおける身体と交換」「上向と翻訳――言葉の身体化」「国家と貨幣」他。主要翻訳書にアラン・バディウ『倫理』フェリックス・ガタリ『リトルネロ』ピエール・クロソウスキー『かくも不吉な欲望』(いずれも共訳)他。

ペテル=パル・ペルバルト(Peter Pal Pelbart)
1956 年に生まれ。ブラジル、サンパウロカトリック大学教授。統合失調症等セラピストでもあり、哲学と狂気の関係や、ジル・ドゥルーズの時間の問題などを中心に研究している。著作にFilosofia de la Desercion: Niilismo,Locura y Comunidad (Tinta Limon, 2009)Carthography of Exhaustion ; Nihilism insideout ( n-1 publications, 2013) などがある。分裂症患者が主体となる劇団Ueinzz に長年参与している。

クリスチーネ・グライナー(Christine Greiner)
ブラジル、サンパウロカトリック大学記号学部教授。身体論, ダンス論が主たる研究領域で、『舞踏――進化の一思想』(1998)、『能と西洋』(2000)、『身体 — 学際的研究への示唆』(2005)などをポルトガル語で出版。東京大学客員研究員、国際日本文化センター客員研究員・国際交流基金フェローとして日本に長期滞在した経験もある。

荒木優光(あらき まさみつ)
1981 年山形県生まれ。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科卒業。音響作家。主な作品に、「sunroof〈代理シャウトのオーディオシステム〉」(2015 年)、音響上演「パブリックアドレス-音場2」(2014 年)など。他に、研究上演シリーズ《showing》の企画・運営、記録にまつわる作業集団アーカイブスペイでの活動など。映像や舞台作品の音楽や音響を担当する事もある。

松田正隆(まつだ まさたか)
1962 年長崎生まれ。現在、立教大学現代心理学部映像身体学科教授。劇作・演出。『海と日傘』(1996 年)で岸田國士戯曲賞、『月の岬』(97 年)で読売演劇大賞作品賞、『夏の砂の上』(98 年)で読売文学賞受賞。2003 年より演劇の可能性を模索する集団「マレビトの会」を結成、代表をつとめる。主な作品に『cryptograph』(07 年)、『声紋都市-父への手紙』(09 年)。写真家笹岡啓子との共同作品『PARKCITY』(09 年)、『HIROSHIMA-HAPCHEON: 二つの都市をめぐる展覧会』(F/T10)。映画の脚本としては黒木和雄監督『美しい夏キリシマ』(03年)などがある。

程 謙(てい けん)
1985 年生まれ。立教大学現代心理学研究科映像身体学専攻博士後期課程在籍。映像身体論、現代思想。主な論文は、「ジル・ドゥルーズ『シネマ』における「信」の問題——言葉を身体に返すことについて」(『流砂』第8 号、2015)。

三宅隆司(みやけ たかし)
1987 年生まれ。立教大学大学院現代心理学研究科。映像身体学専攻博士後期課程在籍。


関連書

『映像と身体』(立教大学映像身体学科編)